CSCCCSCの第一の要である「原材料供給者が提供したい情報を提供する」とはどういうことでしょうか?
営業秘密があって説明を完全な処方情報一式とすることができないとき、代わりにどんな説明ならば良いかを考えてみます。まず、どこまで処方情報を提供できるかは営業の都合によります。説明は適合性確認に資する情報でなければなりませんが、どんな情報なら判定に十分なのかは、使用方法によっても大きく影響を受けます。そして使用方法は原材料供給者としても効能の設計などからある程度予測ができることがありますし、また適合するための条件として使用方法の範囲を顧客に対し示すこともできます。
具体的な場面としてここでは、ステアリン酸カルシウムを滑剤として取引し、それが法に基づくポジティブリストに掲載されている滑剤のどれであるかはあきらかにしないでいたい場合を想定してみます。「これはステアリン酸カルシウムです。国のポジティブリストに適合する範囲で使ってください」との説明は、川下での適合性判定には役立つ情報ですが、営業秘密を漏洩してしまっています。しかし、例えば、「この滑剤をポリエチレンに添加するときは、〇%以下になるようにしてください。この成分はポジティブリストに記載されている滑剤(ステアリン酸カルシウムなど)あるいはそれらの混合物のいずれかです。これらをポリエチレンに添加するときの一番厳しい添加量制限は〇%なので、添加量をこれ以下とすれば、この成分に関しては法適合します。」と説明するなら、営業秘密を漏洩せず、しかも川下での法適合性判定は可能な説明になっていそうです。川下側でさらに添加剤を追加するプロセスが残っているならさらに詳細な説明が必要になるかもしれませんが、そうしたプロセスがないならば原材料段階での適合性だけで十分な説明がなされたことになります。
このように、原材料の成分のみならずその使用方法の制限などをも含めた情報伝達内容は選択の幅が極めて広く、実際にどんな内容とするかは当事者の決め方次第ですので、この説明は画一的な方法を定めておくのではなく、当事者が自ら決めることが最も有効な手段です。
CSCCCSCでは、原材料供給者がまずは説明案を登録することで調整を始める方式としています。両者間でのやり取りが必要になりますが、CSCCCSCでは供給者は川下が適合性判定できるだけの情報を提供すればよく、適合性判定できるならば営業秘密に抵触しかねない詳細な情報まで提供する必要はありません。
CSCCCSCの第二の要である「川下側がそれで十分かを原材料供給者に知らせる構造」が必要なのはなぜでしょうか?
残念ながら、供給者側が登録した説明は、常に適合性判定に十分というわけではありません。上記の例でいえば、使用者が使う他の原材料にステアリン酸カルシウムやほかの滑剤成分が含まれているときには判定結果が変わってしまう可能性があります。使用者側にそうした事情がないことが前提です。もし、使用者側にそうした事情があるならそれを原材料供給者に知らせ、適合性判定情報を修正してもらわなければなりません。川下側とのやり取りを経て適合性判定に十分な適切な説明になっていきます。